「プロンプトエンジニア」という職種が脚光を浴びている。アメリカではこの職に就くと、33万5000ドル(約4500万円)以上の年収を稼ぐことも可能だという。
プロンプトとは、生成AI(人工知能)に入力する指示文のことだ。プロンプトを工夫することで、AIが生成するコンテンツの質を上げるのがプロンプトエンジニアリングである。従来のプログラマーは将来「ChatGPT(チャットGPT)」などの自然言語系の生成AIに取って代わられるのではないか。そして、生成AIを使いこなす職種こそがプロンプトエンジニアだ。
プログラミング言語は必要?
プログラミング言語はどうなるか。「Ruby(ルビー)」の開発者として知られる「まつもとゆきひろ」氏は「いつかはコンピューターが人間の言葉を理解して動作するようになるだろう」と20年前の記事の中で答えている。それから20年以上が経過し、コンピューターは本当に人間の言葉を理解できるようになった。もう夢物語ではない。コンピューターが文章から人間の意図を読み取り、その通りの動作を行うことが可能になったのだ。このことは、プログラミングやプログラミング言語、それを扱うプログラマーの「終わりの始まり」を意味すると考える。
プロンプトエンジニアもプログラマーも両方消える?
日本でもプロンプトエンジニアリングに注目が集まっている。例えば、プロンプトエンジニアの育成に力を入れる企業や、プロンプトエンジニアリングの研修カリキュラムを提供する企業や中・高校向けにプロンプトエンジニアリングの体験授業を提供する企業などが登場している。
プロンプトエンジニアリングに関しては、米オープンAIが、ChatGPTなどのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のプロンプトエンジニアリングに関して、具体的に8つの手法を紹介している。まず第一が「最新のモデルを使うこと」だ。OpenAIが提供するモデルはどんどん改良されているので、これは当然だろう。あとは「希望する文脈、回答の長さやスタイルなどを詳細に記述する」「出力形式を例示する」「してはならないことの代わりにすべきことを指定する」といった手法を紹介している。
しかし、現実のプロンプトエンジニアの業務はもっと複雑だろう。例えば、ある企業のニーズにぴったり合った結果を得るためのプロンプトの調整にはそれなりのノウハウが必要なはずだ。ただし、プロンプトエンジニアリングは、いわば現状の生成AIに不足している部分を小手先で補うものでしかない。生成AIが進化して人間の意図をより正確にくみ取れるようになれば、基本的には不要なものだ。例えば、生成AIの基盤技術GPT-3で有効だった具体的なテクニックの中には最新のGPT-4で不要になったものもある。
プログラマーよりもプロンプトエンジニアのほうが職種としては先に消える可能性がある。生成AIがプログラミングを駆逐するよりも、生成AIの進化がプロンプトエンジニアリングを駆逐するほうが早いと思うからだ。いずれ最後は、生成AIがプログラミングを駆逐する時代がくるだろう。そのときエンジニアに必要とされる技能は、プロンプトエンジニアリングのような狭い範囲のノウハウではないはずだ。部分最適と全体最適を読み解き統括する見識だ。
生成AIの動作原理や内部メカニズムに関する深い理解が必要だし、それまでのITシステムの構造やそれを担ってきたアルゴリズムも理解していなければならない。でなければ、生成AIでシステムをどのように置き換えるかという具体的な方針を決められないからだ。次世代を生きる子供たちは、そうした時代が来ることを見越して今から広範に腕を磨いておいてほしいものだ。
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